SCE
  − BLOOD the last vampire −


〜上巻〜


 2000年東京、翼手と呼ばれる存在とそれを狩る組織、日本刀を持つ謎の少女“小夜”、そして物語に巻き込まれる主人公。

 押井守が原案協力、さらに高品位なアニメーションで定評のあるP.I.Gが制作に携わっているこのソフト、良くできたDVD-OVA並の品質を誇る。

 またこのソフトはただのDVD品質アニメーションムービーが納められているだけでは無く、ADV的ゲームシステムの“やるドラ”シリーズらしくバッド15、グッド4トータルで19ものエンディングを上巻だけで納めている。

 ただ今作品ではBSSと呼ばれるシステムをシナリオの分岐に採用しており、通常のADVの様に現れる選択肢を選ぶだけでは一部のエンディングしか見られないようになっている。

 しかしこのBSSシステムは“この辺りか?”と思われる箇所で発動して、当たりであれば分岐が発生する仕組みなので、通常プレイしていて滅多に解るものでは無い(特にシークレットBSS)。
その為に本作品をフルに見るためには攻略本、もしくは攻略サイトからの情報が必須なのは残念だ。
またプレイ中は僅かなタイミングで出現するBSSをヒットさせる為に、ストーリーに集中できない。

 といっても攻略情報を元に一度エンディングまで到達すると、後はリプレイで様々なシナリオを始めから終わりまでそれこそアニメDVDの様に一気に再生できるので問題は無い。

 システムもショートチャプター毎に自由にセーブできるし、BSSサーチに失敗したと思ったら直ぐにメニューに戻ってロードし直せるのでストレス無くプレイできる。
一度見たシーンはスキップ出来るのも良い。

 シナリオはどれも陰の有るもので見て爽快感を楽しむタイプの物ではないが、こういう悲劇的ストーリーが好みの人にはぴったりのものとなっている。
声優の演出もサウンドも文句無しで、特にエンディングに流れる曲は気に入っている。


〜下巻〜

 このゲーム自体、上巻下巻それぞれ単独でも遊べるようになっている。
自分としては上巻だけで良いかな?とも思っていたのだが、どうやら下巻をプレイしないときちんとしたストーリーにならないと言う話を聞いてしまったので、しかたなく下巻も買ってしまった(笑)。

 さて結果的にみると、結局上巻だけだとシナリオの2/3程度しかプレイできないのだった。
しかし上巻で2/3と言うことは下巻は1/3?

 そう、下巻はストーリーの本当のクライマックス部分しか入っていないのだ。
一応下巻だけ買った人のために大岡レポートというものが有るのだが、これ自体上巻のストーリーを補完するものではなく、上巻で立てたフラグを引き継がない時のための(もしくは下巻からスタートする人の為の)フラグ立て要素見たいなものだ。

 グッドED4が下巻で解決するが、グッドEDと言ってもやはり悲劇的だ。
特に気に入っていたシナリオの瑠璃亜編が・・・だったのはショックだった(爆)。
また・・・が・・・まうのもショックだ。

 結局“小夜”や組織の詳しい正体とかは解らなかったが、上巻から展開するストーリーは個人的にとても良かったと思っている(小夜が介護してくれるシーンとか)。

 また・・・だった瑠璃亜編も救われなくて悲しかったのだが、攻略のお陰で真・瑠璃亜編を見ることができ、溜飲が下がる思いだった。


 しかしこれも攻略情報のお陰であって、黙ってみていればバッドED直行というシステムは相変わらず最悪としか言いようがない。

 制作者はこれをメリットと捉えているようだが、ユーザーの立場に立って考えていないとしか言えないだろう。

 いずれにせよ上巻下巻合わせてのストーリーはとても満足の行くものだった。
希望としては容量を喰う原因となっている複数のバッドEDは要らないから、DVD一枚にして一本のストーリーを楽しめるようにして欲しかった。
中古で買っても二本合わせて一万円近くは辛い(笑)。



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